くまもと型レジリエントな家づくりとまちづくり
【貢献するSDGsのゴール】
■応募活動の概要
高性能な家作りを通し、専門業者、大工などの職人、地域の林業関係者などと連携し地域に根ざした事業活動を展開しています。その中で、熊本地震の際、地域主導の災害復興を目指して地域の人的物的資源を集約し、木造応急仮設住宅を供給する事で二次災害の被災者の健康等の軽減にも貢献できました。
平常時において、家作りで構築された地域ネットワークは、持続可能な地域に貢献できる事に加え、災害時には災害復興及び地域経済の立て直しにも貢献できるロールモデルとして評価されました。現在は、レジリエントな家づくりとまちづくりを全国に広める為に、弊社のビジネスモデルを全国工務店協会等の活動を通じ、全国の普及活動も行っています。
■応募活動の内容
a.応募活動の目的・背景
弊社は、地域のステークホルダーと連携し、安心・快適で健康に暮らせる家づくりを手掛けて来ました。地域で家づくりを担う企業として、甚大災害時の地域経済の立直しの遅れや、最低限度の住環境による被災者の二次被害など問題視しておりました。熊本地震の際は、それらを改善すべく地域一丸となり木造応急仮設住宅を供給しました。この経験を活かし、より一層のレジリエントな家づくり・まちづくりに貢献できるよう高性能な家づくりをするための地域ネットワークをより強固にし、地域木材、地域工務店・職人の力で復興に関連する住宅を建設し、地域経済の立て直しや被災者の二次被害の低減に貢献できる体制を作ることを目的としています。
b.応募活動の具体的な内容
弊社では、熊本地震での木造応急仮設住宅の供給の経験を活かし、レジリエントな家づくりとまちづくりに貢献できる企業を目指し、家づくりに必要な地域ネットワークをより強固なものとなるよう取組を実施している。
【1】 熊本地震での木造応急仮設住宅の供給の経験
被災者の方々の健康・安心を確保するために自社が一般的に建築している高性能な住宅の仕様で、応急仮設住宅を(一社)全国木造建設事業協会の元、熊本県県産材を100%使用した木造応急仮設住宅563戸、みんなの家59棟を建設した。災害時ではあったが、大部分の木材に県産材を使用して、通常流通ルートで資材を購入し、地域の職人さんの力で高性能な仮設住宅を建設することができた。
その結果として、仮設住宅にお住いの被災された方々に健康被害がほとんど出ていなく、生活に必要な光熱費も削減されている。また、地域の木材を使い地域の工務店と地域の事業者と地域の職人の力で建設することで震災直後の地域経済の落ち込んだ時期に仕事を作り地域の経済の立て直しに貢献することができた。
【2】レジリエントな家づくりとまちづくりに貢献できる地域ネットワーク構築
レジリエントな家づくりとまちづくりに貢献しうる地域ネットワークをより強固なものとするために「高性能な家づくりの推進」、「地域の森林組合と連携した地域材の活用」を中心に事業を展開しています。
【高性能な家づくりの推進】
自社が建築する住宅全棟の性能仕様を標準化する事で、価格を抑え数多くの方々に通常よりもエネルギーを30%以上削減できた住宅を供給する事が出来ている。また、天然素材の断熱材を使用するなどの取り組みで住宅の新築時、解体時のCO2排出量も軽減できLCCM住宅への普及にも努めており、熊本地震の木造応急仮設住宅と災害公営住宅を弊社の性能基準で作り被災した方々の健康、光熱費削減に貢献した事で、公共の施設にも性能のいい建物が広がるよう取組んでいる。
<熊本型復興モデル住宅展示場/建設・運営>
・KKN(熊本工務店ネットワーク)加盟工務店38社で運営 ・令和1年8月末現在、来場者数16634名、契約351棟、着工321棟
<買取型災害公営住宅建設>
・熊本県に本社がある工務店(建設業者)設計事務による建設
・高性能災害公営住宅を提案(UA値0.48)施工
<全棟建設性能評価+5回検査による施工精度の確保(耐震性能の確保)>
長期優良認定住宅、設計・建設性能評価+5回検査(JIO + JHS) 取得率100%を維持し、安心して住み続み続けられるよう震災などが起きても最小限の被害で済むような家づくりをしています。
【地域の森林組合と連携して地域材の利用推進】
現在、地方の山林は木材の価格低迷などによる廃業や後継者不足、違法伐採などが蔓延しており、植林して育てるという事が出来ずに山から川に、そして海に栄養が行かないばかりではなく泥水などが流れ込み海の環境をも悪化させています。このような負の循環の解消につなげるために構造・造作・仕上げ材全ての木材を地元森林組合の木材を使用し、森林組合から適正な価格で木材を購入することで伐採された山に植林し整備し良質な木材を育てるサイクルを作る取組を実施しています。
また、小国森林組合が取り組む阿蘇の火山による木材地熱乾燥を推進することで化石燃料にたよらない新しい木材乾燥技術にも取り組んでおり、加えて毎年1年分の弊社使用熱材(セルロースファイバー)使用分のカーボンオフセット・クレジットを購入して県有林の整備に貢献する。※1月~12月使用料を計算して年度末の3月に購入。
<地域木材の活用実績>
・応急仮設住宅、復興モデル住宅、災害公営住宅に全棟熊本県産材を使用し、弊社が建築する住宅の全棟に熊本県産材の合法木材を使用している。
・地域森林組合(小国森林組合)と連携した新住宅ブランドをたちあげ広報活動も行っている。
<カーボンオフセット・クレジットの購入実績> → ※参考資料
・2016年21t(熊本県有林による間伐材を用いた温室効果ガス吸収事業)
・2017年25t(熊本県有林による間伐材を用いた温室効果ガス吸収事業)
・2018年31t(熊本県有林による間伐材を用いた温室効果ガス吸収事業)
■応募活動の自己評価
自己評価の概要
弊社の取り組みは、安全安心、省エネ、健康な家づくりをとおし国土強靭化に資する事業活動を展開している。資材調達に関しても地域経済への貢献を意識し、地域木材の活用を積極的に行い、平常時は家づくりによって地域ネットワークを整備し、災害時はそのネットワークを活かし、地域主導型の災害復旧復興、地域経済の復興にも貢献した。これからはSDGsの「目標11 住み続けられるまちづくり」を中心に、その他多くの目標にも貢献しており、災害の多い日本において、地域に根ざした復興モデルとなり得る事業を展開している。
a.普遍性
今までは、災害復興・復興と言うと国に行政に大手企業主導であったが、熊本地震の際、弊社が中心となり、地域工務店が地域の災害復旧・復興に携わることで、地域経済の立て直しやその後の復興住宅建設など、地域工務店として大きな役割を担うことが出来ることを示すことができた。上記の取組は、国内を中心とした取組ではあるが、海外では災害に脆弱なまちも少なくないことから、世界の都市にも適用できる事例である。
b.包摂生
応急仮設住宅に入居される方は住宅という大きな財産を失われた被災者であるため、高性能で安心安全な仮設住宅を提供することで光熱費が少なく健康にいい生活を送ってい頂くことで自立再建に貢献し得る事業である。
c.参画型
JBN・全国工務店協会、KKN(熊本工務店ネットワーク)の講習会等を通して最新の法規・工法などの情報を全国の工務店との共有と広報を行い、今から家を建てる方々に最新の建築情報を届ける。
d.統合性
住宅の建築をとおし、居住者の健康や省エネ、地域林業の振興などに貢献していることに加え、災害時には日頃から養った技術や地域との連携を活用した地域主導型の災害復興をし、さまざまな課題に統合的にアプローチしている。
e.透明性と説明責任
自社のホームページで活動内容を公表する。
自社と地域森林組合のホームページに連携して公表することで、地域連携の大切さを伝える。
JBN・全国工務店協会の女性活躍の会と連携し講習会等で情報発信を行う。
■応募活動の今後の展望
地域工務店だからできる地域産業を含めての被災者に寄り添い、被災地に貢献できる応急仮設住宅建設を全国に広める事で近年頻発している自然災害の時に被災地が一つになって災害復興に取り組む事が出来る仕組みを構築する。
建築業界の職人不足解消に少しでも貢献出来、社員化することで安定した価値観のある収入と保証が出来ることで若者に職人の魅力を再認識してもらう。
2020年に地域材を使った大型木造研修施設を建設することで、職人が憧れるような施設で研修を行い数多くの技能士を育てたい。
地域森林組合と連携して地域材使用の促進に努めることと、熊本県カーボンオフセットクレジットの購入で、地域の私有林・公有隣の整備を行うことにで、「目標14 海の豊かさを守ろう」「目標15 陸の豊かさを守ろう」に貢献できると思われる。