• 一般住宅

木の肌理と暮らす、静けさのある家

2019年

[所 在] 熊本県

-木の肌理と暮らす、静けさのある家-

ダイニングと一体になった造作キッチンは、天板のステンレスと無垢の木口が心地よいコントラスト。
天井のリズミカルな羽目板と小ぶりのペンダントが、料理や会話の手元にだけそっと光を落とします。
昼は木目のグラデーションが柔らかく立ち上がり、夜は陰影が際立って佇まいが引き締まる——同じ場所が、時間帯で表情を変える設えです。

階段を上がった先には、腰掛けたくなる段差と壁一面の投影面。
家族が集まる時間には映像を大きく映してシアターに、日常は素足に心地よい床の広がりをそのまま楽しむ。
廊下脇のニッチや可動棚には、季節のグリーンや小物を少しだけ。音も光も過剰にならない“余白”が、暮らしの主役を住まい手に戻してくれます。

洗面・ランドリーは、素直な動線とオープン棚の実用美がテーマ。
無垢材のカウンターと引き出し、壁付けの可動棚で“しまう・干す・片づける”がひとつにつながる。
隣接する浴室まで視線と動線が抜けるから、家事が流れるように完結します。

夜のテラスに出ると、室内と同じ木の天井ルーバーが外まで連続し、内外が緩やかにつながります。
段差を兼ねたウッドデッキは腰掛けにもステップにもなるスケールで、ガラス越しに見えるキッチンとソファの灯りが背景の風景になります。
点在するダウンライトは必要な明るさだけを落とし、木肌の色温度を損なわない。
カーテンを引けばプライベートな縁側に、開けば庭と室内の動線が一本になる——季節ごとに使い分けられる“外の居場所”です。

エントランスは、プライバシーを確保できるトンネルのような設え。
溶岩質の石を思わせるフラットなステップがリズムを生み、深い庇と木の軒天が来客を柔らかく迎え入れます。
左手の植栽が影を落とし、塗り壁のマットな質感と相まって、音も温度も一段落ち着く。
ドアを開ける前から、家のトーンがささやかに伝わる前庭のしつらえです。

素材の表情をそのまま受け入れ、照明と段差でリズムを与える。
機能は徹底して素直に、意匠は過不足なく。そんな設計の姿勢が、日々の暮らしに落ち着いた上質さをもたらしています。